アルミ車両の利点
アルミ合金は「軽くて強い」「押出性に優れる」「耐食性に優れる」「リサイクル性に優れる」などの特徴を持っています。これらの特徴を生かした設計を行うことで、次のようなアルミ車両の利点が生まれます。
1.軽量化
同一質量で耐える強度を表す耐力重量比は、ステンレス鋼の約1.7倍の強度があります。
また、同一質量における板の剛性はステンレス鋼の約8倍の剛性が得られます。
これらの長所を生かして車両の軽量化に貢献します。
アルミ合金と他金属の耐力重量比の比較
アルミ合金 | ステンレス鋼 | 普通鋼 | |
---|---|---|---|
耐力:MPa=106N/m2 | 205以上 (A6N01) |
345以上 (SUS301L-DLT) |
355以上 (SPA-H) |
密度:103kg/m3 | 2.7 | 7.9 | 7.9 |
耐力重量比(=耐力/密度):103N・m/kg | 76 | 44 | 45 |
耐力重量比の比率 | 1.7 | 1 | 1 |
アルミ合金と他金属の同一質量における剛性(EI)の比較
アルミ合金 | ステンレス鋼 | 普通鋼 | |
---|---|---|---|
ヤング率(E):GPa | 71 (A6N01) |
200 (SUS301L-DLT) |
210 (SPA-H) |
ヤング率(E)の比率 | 0.36 | 1 | 1.1 |
同一質量における板厚の比率(密度の逆比) | 2.8 | 1 | 1 |
剛性(EI)の比率(=ヤング率の比率✕板厚の比率^3) | 7.9 | 1 | 1.1 |
2.製造コストの削減
アルミ合金は押出性に優れるため、「車両の部位によって異なる構造の大型のダブルスキン形材」の製造が可能です。
ダブルスキン形材は、形材自体の剛性が高いため、骨部材なしで丈夫なパネルが構成できます。さらに、車両と同じ長さで、床面、側面、天井面などに適した形状のダブルスキン形材を車両の長手方向に配置することで、車体を形成できるので、自動溶接やFSWの適用、ロボット化が容易で、製造コストの削減に貢献します。



3.省メンテナンス
アルミ合金は、耐食性が良好なので、無塗装でも腐食の心配がなく、再塗装などの費用の節減などで車両メンテナンスを節減できます。
また、車両の軽量化の効果により、ブレーキ用制輪子や車輪などの摩耗が減ることで車両メンテナンスが節減できます。さらに、軌道への負荷が低減し軌道メンテナンスも低減されます。
4.リサイクル性
アルミ合金製車両を廃棄した場合、その材料を再生地金にするためのエネルギー消費は、新地金を作る場合と比べて、わずか3%で済みます。