【委員会活動報告】

 

自動車技術展

『人とくるまのテクノロジー展2004』及び材料フォーラム報告

 

(社)日本アルミニウム協会

自動車アルミ化委員会

 


1.はじめに

 自動車技術会主催2004年春季大会は,5月19日(水)〜21日(金)の日程でパシフィコ横浜を会場として開催された。春季大会は,学術講演会と自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展とから構成されている。

 日本アルミニウム協会・自動車アルミ化委員会は,最新の自動車技術や部品が展示される『人とくるまのテクノロジー展2004』と,それに平行して開催される『材料フォーラム』に参加し,自動車のアルミ化に関連した最新の技術動向を調査した。

 その概要を報告する。

 

 

2.人とくるまのテクノロジー展2004

 第14回目の開催となった自動車技術展『人とくるまのテクノロジー展2004』には294社*1)の出展があり,過去最多の昨年を更新し36社増と年々増加傾向にある。

*1)自動車会社:11社,部品会社:93社,材料:24社,試験計測機器:106社,カーエレクトロニクス:20社,情報・ソフト:26社,その他:14社

 

 2.1.展示概況

 ここ数年,環境汚染やエネルギー資源不足等が問題視されており,自動車にとっては軽量化や低燃費化が大きな課題となっている。これを解決するためには,新たな材料や加工技術の開発が必要となる。このような背景の中,現状の最先端技術として,燃料電池車,電気自動車,天然ガス車を始め,それに関連する部品類の展示が目立った。

 実車展示の様子を写真1〜3に示す。

 

 


写真1 FCHV(トヨタ自動車)    写真2 X-TRAIL-FCV(日産自動車)     写真3 MR-WAGON-FCV(スズキ) 

 

 2.2.アルミニウム部品

 アルミニウム部品は,サスペンション部品,エンジン関連部品,熱交換器,鋳物・ダイカスト部品などの展示があった。昨年は,レガシーのフードやリアゲート(富士重工),RX−8のショックコーンボンネット(マツダ),FCHVドア(トヨタ)等,ボディパネル関連の展示が数多く注目の的となっていたが,本年はボディパネル関連の展示は無かった。

 サスペンション部品では,高靭性ダイカストによるサブフレーム,鋳造鍛造,レオキャスト等の各種アーム・リンク類,新製法による超軽量アルミホイールなどが多数展示された。エンジン関連部品では,薄肉重力鋳造によるインテークマニホールドや,押出材によるエンジンマウントブラケットなどが展示された。

 また,ハイブリッド車用電動コンプレッサーシステムやフロンフリーカーエアコン,鉛フリー快削合金や軸受け合金など,環境汚染防止に適応した展示品が増加していた。アルミニウム関連部品の出展内容を表1及び写真4〜31に示す。

 


表1 アルミニウム関連部品の出展内容

部位

サンプル名

材料・技術

特徴

展示会社(応用例)

写真

1

ボディ

バンパ,ナックル等

押出材,鍛造

軽量化

トヨタ(プリウス)

4

2

シャシー

サイドメンバ

ハイドロフォーム

軽量化,一体化,加工工数削減

AP&T

5

3

サスペンション

フロントサブフレーム

高靭性ダイカスト

軽量化,一体化

旭テック

6

4

サスペンション

ナックル

鋳造鍛造

6xxx系合金使用,高強度低コスト化

旭テック

7

5

サスペンション

アッパーアーム

鋳造鍛造

軽量化,材料コスト削減

日本軽金属

8

6

サスペンション

リンク類

ダイカスト

軽量化,耐食性向上

THK

9

7

サスペンション

ホイール

組織微細化

超軽量化,高強度

旭テック

10

8

ステアリング

ステアリングシャフト

ロータリー・スウェージング

軽量化

ハインリッヒ・ミュラー(BMW,GM)

11

9

エンジン関連

エンジンクレードル

ダイカスト

一体化,軽量化

Dubai Aluminium

12

10

エンジン関連

ブラケット類

押出材

形状自由度大

日本軽金属

13

11

エンジン関連

シリンダライナ

粉末合金押出

低熱膨張,高弾性

日本軽金属

14

12

エンジン関連

インテークマニホルド

薄肉重力鋳造

軽量低コスト化

アイシン高丘

15

13

熱交換器

フロンフリーカーエアコン

自然冷媒(CO2)使用

環境負荷低減

デンソー

16

14

熱交換器

電動コンプレッサーシステム

ハイブリッド車用空調システム

快適性,燃費向上

デンソー

17

15

熱交換器

一体型ラジエーター&コンデンサ

ろう付け

コンパクト化,軽量化

カルソニックカンセイ

18

16

熱交換器

一体型コンデンサ

ろう付け

PFCとレシーバータンクの一体化

日本軽金属

19

17

熱交換器

オイルポンプハウジング

酸素置換ダイカスト

 

日本軽金属

20

18

熱交換器

オイルウォームアップシステム

ろう付け

軽量化,低コスト化

カルソニックカンセイ

21

19

熱交換器

スクロール

熱間密閉鍛造

抜き勾配

日本軽金属

22

20

ブレーキ

プレーキキャリパ

鋳包み技術

高剛性,軽量化

日本軽金属

23

21

ブレーキ

ナックル&キャリパ

レオキャスト

高剛性,軽量化

アイシン高丘

24

22

ブレーキ

ディスクロータ

粒子分散型MMC

強度,耐久性向上

アイシン高丘

25

23

軸受け,継手

各種軸受け

 

鉛フリー,耐摩耗性向上

大同メタル

26

24

軸受け,継手

各種軸受け

 

耐摩耗性向上,耐疲労性向上

大豊工業

27

25

軸受け,継手

一体継ぎ手

特殊鍛造

一体化による強度,信頼性向上

エトー

28

26

ケーブル

EV/HEV用大電流ケーブル

アルミ導体+ハロゲンフリー被覆

軽量化

矢崎総業(プリウス)

29

27

ケーブル

EV/HEV用大電流ケーブル

アルミ導体+ハロゲンフリー被覆

軽量化

古河電工

30

28

フレーム

フレーム

CFダイカスト

一体化

ヤマハ(フラントマジェスティ)

31

 

    

        写真4 プリウス           写真5 試作サイドメンバ       写真6 フロントサブフレーム

            (トヨタ自動車)                 (AP&T)                       (旭テック)

 

    

         写真7 ナックル                    写真8 アッパーアーム                 写真9 各種リンク類

           (旭テック)                    (日本軽金属)                      (THK)

 

 

   

       写真10 ホイール                  写真11 ステアリング・シャフト             写真12 エンジンクレードル

               (旭テック)                     (HPM)                (DubaiAlumimium)

 

 

    

      写真13 各種ブラケット類         写真14 シリンダライナ        写真15 インテークマニホルド

       (日本軽金属)            (日本軽金属)           (アイシン高丘)

 

 

  

      写真16 フロンフリーカーエアコン類      写真17 電動コンプレッサシステム      写真18 一体型ラジエータ&コンプレッサ

       (デンソー)            (デンソー)             (カルソニック)

 

  

 写真19 一体型コンデンサ        写真20 オイルポンプハウジング      写真21 オイルウォームアップシステム

       (日本軽金属)          (日本軽金属)             (カルソニック)

 

 

    

      写真22 スクロール          写真23 ブレーキキャリパ      写真24 ナックル&キャリパ

           (日本軽金属)          (日本軽金属)        (アイシン高丘)

 

 

   

 写真25 ディスクロータ          写真26 各種軸受け         写真27 各種軸受け

        (アイシン高丘)           (大同メタル)             (大豊工業)

 

 

  

写真28 一体継ぎ        写真29 アルミ電線(プリウス用)       写真30 アルミ電線

        (エトー)            (矢崎総業)              (古河電線)

 


 


          写真31 アルミフレーム(フランドマジェスティ)

              (ヤマハ発動機)

 

2.3.マグネシウム部品

 マグネシウム部品は,低燃費や軽量化の観点から車体への採用が増加してきており,今後もアルミニウムの競合材の一つとして目が離せない存在である。展示品としては,インスツルメントパネルやフロントエンドモジュール,シートフレーム,ステアリングホイールなどが展示された。マグネシウム関連部品の出展内容を表2及び写真32〜34に示す。

 

 


 

表2 マグネシウム関連部品の出展内容

部位

サンプル名

材料・技術

特徴

展示会社(応用例)

写真

1

シート

シートフレーム

ダイカスト

軽量化,一体化

旭テック

32

2

内装

フロントエンドモジュール

ダイカスト

軽量化,一体化,

Gibbs(Ford)

33

3

内装

インスツルメントパネル

ダイカスト

軽量化,一体化

Gibbs(GM)

34

4

内装

ステアリングホイール

ダイカスト

軽量化,一体化

Gibbs

34

 

 

    

写真32 シートフレーム         写真33 フロントエンドモジュール    写真34 インスツルメントパネル/ステアリングホイール

     (旭テック)           (Gibbs)           (Bibbs)

 

 


 

3.材料フォーラム

 本年度の材料フォーラムは,『軽量化の追及と自動車材料の新たな挑戦』と題して,全9件の講演が行われた。主題の通り,自動車の軽量化は排出ガス削減に大きな効果があり,環境対策の一つとして重要な役割を示す。

 講演では,軽量化の追及に向けて,鉄鋼,アルミニウム,樹脂など材料技術面からの取組みと,熱処理や加工方法等,加工技術面からの取組みに焦点を当てたものであった。

 自動車アルミ化委員会は毎回フォーラムに参加しており,本年もアルミニウム業界より2件の話題提供を行った。

 以下にフォーラムで報告された内容を紹介する。

 

3.1.軽量化の追及と自動車材料

 :仁頃 力三(日産自動車株式会社)

 自動車の軽量化のための材料開発の動向と課題についての説明があった。今後も更な る軽量化実現のため材料開発の進展が重要であるが,部品一体化やモジュール化のよう な材料,設計,生産が一体となった取組みによる材料置換を超えた新たな軽量化技術が

求められる。

 

3.2.軽量化に向けた高強度薄鋼板と適用技術

 :吉武 明英・山崎 雄司・占部 俊明

(JFEスチール株式会社)

 最近の材料開発の中から超強高度鋼板の現状や構造面からの軽量化対策の紹介があった。自動車軽量化のために,材料開発研究が活発に行われ,新材料の採用が目立つ一方で,軽量化に対して材料面からのアプローチだけでは限界があり,自動車部材の構造そのものの変革が必要であると言われている。

 

3.3.ボディー部品の後熱処理強化技術

 :小嶋 啓達(住友金属工業株式会社)

 高周波焼入れと熱間プレスを中心として,後熱処理工法とその素材の特徴,熱処理後の性能についての説明があった。衝突安全性と軽量化ニーズを背景にして,これら技術は超強高度鋼板と棲み分けながら適用が拡大していくと思われる。

 

3.4.鍛造部品の軽量化を目指した組織制御技術

 :吉田 広明・五十川 幸宏(大同特殊鋼株式会社)

駆動系や足廻り部品に多用されている非調質鋼の結晶微細化手法として,加工熱処理技術であるオースフォーミング・プロセス,制御鍛造プロセスに関する研究,開発の検討結果が報告された。鍛造における組織制御の今後の期待として,更なる結晶粒の微細化があげられる。

 

3.5.コンパクト型ハイドロフォーミング設備の開発

 :本多 修・弘重 逸朗・石橋 博雄

(新日本製鐵株式会社)

 ハイドロフォームに関する基礎的な成形技術,材料評価法,実部品開発技術,成形設備等広範囲にわたって開発してきた成果が報告された。また,成形条件面においては,数値解析技術を用いてハイドロフォーム化を実現した例も紹介された。

 

3.6.自動車のアルミニウム化を進める最近の技術

 :宇都 秀之(住友軽金属工業株式会社)

車体のアルミ化についての最近の動向や,新しい技術についての説明があった。環境問題や法規制により,近年欧州では車体へのアルミニウム部品の採用が急速に増加している。日本でも自動車へのアルミニウム部品の採用が増加しており,今後も着実に伸びていくと思われる。

 

3.7.自動車用アルミ押出バンパー補強材の

  衝突強度評価

 :橋村 徹・橋本 成一・福本 幸司

(株式会社神戸製鋼所)

 バンパの低速度及び中速度衝突試験に対応した効率的な断面設計手法例が報告された。アルミニウム材の利用に必須の強度評価技術が充実し,他の衝突安全部材への採用に向けた努力を継続していく。

 

3.8.熱可塑性エラストマーの高機能化

 :神品 順二(JSR株式会社)

 現状の熱可塑性エラストマー(TPE)による軽量化技術は市場ニーズに十分には応えていないと考え,更なる改良検討を行ったオレフィン系TPEの新グレードが紹介された。今後も市場ニーズにタイムリーに応えるため,継続的かつ精力的にグレード拡充を行っていく。

 

3.9.自動車用塗膜のチッピング現象の解析

 :永野 裕幸・中尾 泰志・水谷 豊・中村 茂

(関西ペイント株式会社)

 チッピング現象を高速鉄球打ち付け試験で観察すると共に,複層系の塗膜としてあるべき方向性について,特に中塗装に注目して考察した内容が報告された。本試験及びその観察により,衝撃エネルギーは塗膜破壊と衝撃振動による付着破壊及び振動吸収に費やされる様子が捕らえられた。

 

 

4.学術講演会

 本年度の学術講演会では,360件以上(77セッション)の論文が発表された。近年の傾向として,環境対応やリサイクル技術,燃料電池やEV/HEV/FEHV等のテーマが増えているが,自動車のアルミ化関連の発表では,昨年の東京モーターショーで注目を浴びたコンセプトカー「i」(三菱自動車工業)の発表があった。

 以下に学術講演会論文内容の一例を紹介する。

 

<材料T>

 81 高性能車両におけるアルミ製ルーフの開発

 :松村 吉修・小川 伸一・高石 英幸・石原 浩一・

佐藤 慎也・小林 英市(三菱自動車工業)

高性能車両における軽量化と重量バランス向上を目的に車両で最も高い位置にあるルーフのアルミ化に取り組んだ。その結果,アルミ製ルーフの成形及び接合技術を確立した。

 

<低燃費技術>

 248 軽量化・低燃費技術を結集したコンセプト

   テストカーの開発

  :川上 祥央・中川 速水・河合 弘統・吉田 昌弘・

   貝原 邦明(三菱自動車工業)

1.0L MIVECエンジンにアイドリングストップ機構を追加したパワートレンを採用,ボディ,シャシにアルミを多用し超軽量化することで,超低燃費を達成。ミッドシップエンジン・リヤホイールドライブのプラットフォームにより,優れた居住性と衝突安全性を両立したコンセプトテストカー(モーターショー出品)の技術を紹介。

 

<リサイクルの要素技術と評価技術>

 36 廃自動車リサイクル各プロセスの環境負荷

 :大矢 仁史・遠藤 茂寿・稲葉 敦

  (産業技術総合研究所)

   岡 浩司(栗田工業)・

    茂呂 端生(早稲田大学)

廃自動車のリサイクルプロセスについて,その破砕,分離工程のインベントリーデータを実験的に考察し,素材製造プロセス,新規素材リサイクルプロセスとの比較を行ない,廃自動車リサイクルが環境に与える負荷を定量的に検討した。

 

 

5.まとめ

 環境対策の一つとして,自動車の軽量化は排出ガス削減に大きな効果があり,重要な役割を示す。今後も車体軽量化に向けて,アルミニウム部品の採用が増加していくものと考えられる。また,継続して環境問題や省資源問題に対応していくために,材料技術面だけでなく,加工技術面からの取組みも重要な課題であり,この課題を解決すべく,アルミニウム業界だけでなく,自動車業界始め多方面との連携が必要であると感じた。

 

以上