【委員会活動報告】

 

第38回 東京モーターショーにおけるアルミ化動向調査報告

 

(社)日本アルミニウム協会

自動車アルミ化委員会

 


1.はじめに

 第38回東京モーターショーが、日本コンベンションセンター(幕張メッセ)にて2004年11月2日から11月7日の6日間にわたり開催された。

 乗用車・二輪車と分離して商用車専門ショーとなって今回で3回目となるが、次回より乗用車・二輪車・商用車が一体となったモーターショーとなることから、商用車単独での開催は今回で最後となる。

ショーのサブタイトルも、「働くくるまと福祉車両」となり、商用車=「働くくるま」と併せて「福祉車両」の最新モデルと最先端技術が展示された。

 ショーへの出品は126の企業,政府,団体から、342台と前回(314台)を上回り、またその内半数以上の206台が福祉車両とそのサブタイトル通りの展示であった。また、世界初の発表が35台,日本初の発表が17台と前回の商用車ショーを大きく上回る近未来車が披露され、更に同乗試乗会や体験ゾーンなど来場者が参加・体験できる企画も開設されていた。

 (社)日本アルミニウム協会 自動車アルミ化委員会では、本モーターショーにおける商用車,福祉車両およびその部品の軽量化・アルミ化動向を中心に調査を行ったので、その概要を報告する。

 

 

2.展示概況

 2003年の東京条例や改正NOx法の施行、2005年に始まる衝突安全基準改正などにより、乗用車同様、燃費、積載効率の向上と排ガスのクリーン化は大きな課題である。アルミ使用による車体の軽量化は、積載率の向上に加え、空車時の燃費向上につながる。

 前回,前々回のアルミダンプ,アルミフレーム車のような軽量化を大々的にアピールしたものは見られなかったが、荷役効率向上や燃費改善を狙いとしてリアドア,センターレール,タンク等をアルミ化したウィング車やトレーラが出展されていた。

 商用車では市販車に加え、新長期排出ガス規制への対応車の出展が目立った。参考出品としてハイブリッド車,ジメチルエーテル車,天然ガス車や歩行者保護対策を考慮し、快適な走行を実現する近未来トラックが出展された。また、移動販売を目的とした機能を向上した車や、運送とディスプレイを一体化した新しいビジネススタイルを提案した車の展示も見られた。

 福祉車両では車椅子乗降機能や、リフトアップ機能など、障害者が健常者と同様な運転が出来、健常者と共用可能なように機能向上されたモデルが提案されている。

 

3.商用車のアルミ化状況

 3-1.車両メーカ

国内の乗用車メーカ各社(トヨタ,日産,ホンダ,マツダ,スバル,三菱,スズキ,ダイハツ)、大型商用車メーカ各社(日野,いすゞ,日産ディーゼル,三菱ふそう)、および海外メーカ2社(ダイムラー・クライスラー,ボルボ)が出展していた。

 

 @トタグループ

 「環境」「安全」をテーマに世界発出品となるハイブリッドシステムを搭載したトラックやバス,バンの次世代モデルやコンセプトカーを多く展示していた。アルミ化部位としては特に新しいものは見られず、従来からアルミが採用されているエアタンク,リアバンパ,トラック架装部程度であったが、同ブースに展示されたスカニア社の欧州仕様トラックでは燃料タンクやインシュレータ(写真1)がアルミ化されており、乗用車同様欧州でアルミ化が先行していることが伺えた。

 

  写真1 アルミ燃料タンクとインシュレータ

     (日野・スカニア)

 

 A日産・日産ディーゼル

 世界初出品となる尿素SCRシステムによる排出ガス規制対応技術を搭載した新型トラックやバスを大きく展示していた。このシステムを搭載した新型トラックでは、燃料タンクがアルミ化(写真2)されており、またセンターレールをアルミ化(写真3)したウィング車も展示されていた。

 

写真2 アルミ燃料タンク 写真3 アルミセンターレール
(日産ディーゼル) (日産ディーゼル)

 

 Bいすゞ

 天然ガス(CNG)車,ジメチルエーテル(DME)車,ハイブリット車のトラックをそれぞれ参考出品していた。この他、市販車の展示でリアドアへの中空アルミ押出材の適用(写真4)や、サイドバンパへのアルミ押出材の適用(写真5)が見られた。また、一部参考出品車(車椅子乗降の福祉車両)では燃料タンクがアルミ化されていた。

 

写真4 アルミ形材リアドア等 写真5 アルミサイドバンパ
(いすゞ自動車) (いすゞ自動車)

 

 C海外メーカ

 ボルボ,ダイムラー・クライスラーではそれぞれ大型トラックの市販モデルが出品されていたが、いずれも燃料タンク,インシュレータはアルミ化されていた。国内メーカではこれらの部品のアルミ化は一部モデルに留まっているが、前述の日野スカニアと同様、欧州ではアルミ化が一般的になっているものと推定される。

 

 

3.2.部品メーカ

 アルミ化が一般化したためか、アルミ化・軽量化を前面に出した展示は少なかったが、この中では日本フルハーフが新アルミ形材を採用、大幅軽量化したウィングコンテナの展示(写真6)、パブコが庫内容積を確保するために、ルーフパネルやアオリの構造を見直したウィングボディを展示していた(写真7)。

 また、テールゲートリフタの展示も多く見られたが、極東開発工業のではこのリフタ部品にアルミ形材を適用した車両が出品されていた(写真8)。

 

写真6 軽量ウィングコンテナ 写真7 ウィングボディ 写真8 テールゲートリフタのアルミ化部位
(日本フルハーフ)(パブコ)(極東開発)

 

 

4.福祉車両のアルミ化状況

 国内各乗用車メーカから、市販車をベースに車椅子から乗降をサポートする機能を持った福祉車両が多数展示されていた。これらの乗降サポート機能は運転席,助手席へ電動でリフト・回転する機構と後部ドアからスロープ,リフトが駆動する機構の2種類に分けられ、前者にはアルミ材の採用はほとんど見られないが、後者のスロープ,リフトタイプにはアルミ材の採用も多く見られた(写真9,10、11)。

 

写真9 車椅子スロープ 写真10 車椅子リフト 写真11 バススロープ
(スズキ福祉車両) (三菱福祉車両) (いすゞ自動車)

 

 

5.おわりに

 今回のモーターショーでは、前回と比べて新しくアルミ化された部位はあまり見られず、むしろ燃料タンクなどについてはアルミ化の動きがまだこれからと思われる展示状況であった。しかしながら、各種法規制により、年々車両総重量が増加する中、乗用車と同様、燃費,積載効率の向上、排ガスのクリーン化が大きな課題となっている。従って、今後もハイブリッドや新燃料エンジン,排ガス浄化システムの実用化と併せてアルミ化による軽量化が進んでいくものと思われる。

 

以上