中世ルネサンス時代の古楽器などを用いて子どものための創作音楽を奏でる楽団「ロバの音楽座」。代表の松本雅隆さんは、ジブリ映画の音楽にも参加し、NHKの教育番組などでも活躍されている音楽家です。東京・立川にある「ロバハウス」(http://www.roba-house.com/)を主な拠点に、国内のみならず世界各地での演奏活動、そして即興的な音あそびや空想楽器づくりのワークショップなどを開催しています。夏休み期間中に行われたワークショップに、アルミ箔を使ったまったく新しい楽器が登場しました。
ワークショップの会場である「ロバハウス」は、玉川上水駅から6分ほど歩いたところにあります。緑に囲まれ滔々と流れる玉川上水に沿って遊歩道を歩いていくと、木々の隙間からふっと、木と土で出来たおとぎ話に出てきそうな建物が現れました。どこか懐かしい温もりと、不思議なワクワク感に満ちています。茂った草木の間から動物たちが顔を出し、こちらに向かって話しかけてきそうな雰囲気です。
今回のワークショップでは、空想楽器『ムラドクスマ』をつくりました。後ろから読むと『マスクドラム』。その名の通り、お面を掲げるように顔の前で構え、裏面に配置された様々な素材を叩いてリズムを刻みます。
叩く素材や大きさ、形状によっていろいろな音が出るのが特徴です。ぽこぽこ、シャンシャン、とんとん、カンカン、ぱんぱん、チンチン、こんこん…。初めて聞く音ばかりだけど、どこか懐かしい感じ。どこを叩くと、どんな音がするのかな? 叩いているうちに、どんどん楽しくなってくる不思議な楽器です。当日は親子連れなど約20人が参加しました。
空想楽器の材料はすべて、普段の生活の中で目にする身近なものばかりです。ダンボール、牛乳パック、毛糸、空き箱、空き缶、紙筒、王冠、スチロールトレー、そしてアルミ箔のカップ容器などなど。よく見ると、小石、小枝、貝殻、どんぐり、松ぼっくりなど、自然の中から拾ってきたようなものもあります。
松本さんは言います。「昔の人は、身近なものの中からいい音がするものを探して、それが楽器になっていったんですね。今のように色々な音(音階)が出なきゃいけないとか、こうじゃなきゃいけないとかは無かったんです。空想楽器も、子どもたちと一緒に身近な素材がどんな音がするのか確かめながら、それを楽器にしています。子どもたちにも昔の人と同じような感性で"音"を探して欲しいんです」
ワークショップに参加した子どもたちは振ったり、叩いたり、素材の音を一つ一つ確かめながら、思い思いの『ムラドクスマ』を作っていきました。
空き箱やアルミトレーなど、松本さんが手にするとたちまち楽器になってしまいます。ワークショップでの制作中、おもむろにアルミトレーを手にした松本さん。トレーの底を指で叩くようにして、リズムを刻み出しました。まるで魔法でも見ているかのように、音楽が始まります。
「アルミ箔は、乾いたいい音がしますね。昔の人からしたら、夢のような音だと思います。こういうトレーはそのままでもドラムのように使えるし、カップを貼り付けて底を軽く叩いてもいい」と松本さん。「形を自由に変えられるのもいいですね。きらきらと反射して、装飾用としてもとってもきれいです。厚さもいろいろあって、こういう厚手のものは、蛇腹のように折り曲げて貼り付けると、ウォッシュボード(洗濯板のようなリズム楽器)のようにも使えます」
ワークショップの終盤になって、アルミ箔だけで作った『ムラドクスマ』が登場しました。
「そんな夢の素材をふんだんに使ってつくった『ムラドクスマ』がこれです。じゃじゃーん。その名も『アルミ伯爵』!」
全体を振ると、アルミ箔が揺れてカシャカシャと音が鳴ります。裏面には、いろんな形のアルミ箔が張り付けてあります。カップをそのまま使ったものもあれば、折り曲げたりして色々な音が出るようになっています。
さらに、ホースから息を吹き込むと"ブーッ!"と鳴る仕掛け。これはじつは、アルミ箔をリードにした笛だったのです。竹の筒を斜めに切って、そこに小さく切ったアルミ箔をセット。全体をホースに挿し込んで固定します。すると、ブーッと素朴な音がする笛になりました!
ワークショップの最後は、みんな一緒に『ムラドクスマ』を叩きながら合唱。ロバの音楽座オリジナルの"へんちょこりん"な歌です。楽しく踊りながら、ロバハウスの中をぐるーっと行進しました。
♪へんちょこりんりん ちょこりんりん ♪へんちょこりんりん 手をつなごうー ♪へんちょこりんりん ちょこりんりん ♪へんちょこりんりん 手をつなごうー ♪タッタッタッ! タッタッタッ! タッタッタッタッタッタッタッ!
『ムラドクスマ』以外の空想楽器の紹介と演奏、そして中世の楽器の演奏などもあり、盛りだくさんでとっても楽しいワークショップでした。